ライダースの線画にエポレットを強調したアイキャッチ

ショットのお悩みベスト5|サイズ感と金具でよくあるご相談

2026.08.11

工房の修理台に、いちばん多く届くブランドのひとつが、ショットです。

若い頃に手に入れた一着。譲り受けた一着。古着屋で見つけて、そのまま眠っている一着。全国から届くその一着ずつに、それぞれのご相談がついてきます。

このページでは、実際に届いたご相談を、多い順に五つ並べました。ブランドの成り立ちや代表モデルの違いはショット(Schott)とはにまとめましたので、ここでは「その一着を、どうするか」だけをご説明します。

ショットに届くご相談の分類——サイズ・消耗・見た目
ご相談は、三つに分かれる。

第5位|エポレットを取りたい

肩の上の、小さな造作の話です。

613(ワンスター)の星も、618の肩章も、その型の顔そのものです。それでも、「自分の着方には要らない」というご相談が届きます。譲り受けた一着で、前の持ち主の好みがそこに出ている、という場合もあります。

外すことはできます。ただし、先にひとつだけ申し上げています。スナップボタンの取り外し跡は、必ず残ります。

消せるものではありません。長く着られた一着であればなおさら、肩章の下だけ革の色が違って残ります。ですから、跡が残ることをご了承いただいたうえで、お受けしています。

跡ごと引き受けて外すのか、それとも残しておくのか。そこを決めていただくところから始まります。

肩章そのものについてはエポレットとはでご説明しています。ワンスターの星は、まさにこのエポレットの上にあります。

ショットのエポレットに留められた星型のスタッズ
肩章の上の星。取り外すと、跡が残ります。

第4位|キルティングの裏地が、草臥れてきた

ショットの裏地でご相談が多いのは、キルティング地の劣化です。

革はまだ十分に元気なのに、内側のキルティングだけが先に草臥れている。修理台では、よく見る姿です。

交換のときには、二つの方向があります。

  • もう一度キルティングに戻す。もとの一着の表情と、あの厚みをそのまま残す選び方です
  • キュプラのような、滑らかな生地に変える。内側の当たりが変わり、着脱の感触も変わります

どちらが正しい、ということはありません。その一着を、これからどう着るかで決まります。もとの姿を守りたいのか、着心地を今の自分に寄せたいのか。そこをうかがってから、生地を選びます。

裏地は、必要な分量を解き、革の内側にアクセスして納めます。革そのものに手を入れずに、内側だけを新しくできる直しです。裏地の交換については裏地交換にも書きました。

第3位|ファスナーの先端が裂けた

ショットのファスナーで、いちばん多いのが先端の裂けです。

原因は、はっきりしています。着ているあいだ、先端に負担がかかり続けているからです。閉めたときに力の集まるところが、そのまま傷むところになります。裂けは、その一着が着られてきた証しでもあります。

ですから、同じものへ替えるだけでは、いずれまた同じところが裂けます。この先も着ていくことを考えると、手は三つあります。

  • ダブルジップに替える。開きが二か所になるぶん、先端への力の集中が避けられます。この理由でダブルジップをご希望になる方は、少なくありません。詳しくはダブルジップ化に書きました
  • サイズアップする。脇に革を継ぎ足して身幅を広げれば、閉めたときにファスナーへかかる力そのものが減ります。大きくする、という、繕いです
  • 同じ形で替える。ジッパーの形状も引き手も、YKKから近いものを選びます

裂けを「金具が寿命だった」で終わらせず、なぜそこに力が集まったかまで戻って考える。そのうえで、次に裂けにくい形を一緒に決めます。フロントのファスナーそのものについてはフロントファスナーの交換をご覧ください。

第2位|袖が長い

袖丈は、詰められます。ショットの場合、袖先から詰めるのが一般的です。

同じライダースでも、ルイスレザーとは事情が違います。ショットの袖はデザインが比較的シンプルで、コインポケットも付きません。袖先から手を入れても崩れるものが少ないので、こちらからお勧めしています。

袖口のファスナーが長い場合には、決め方が二つあります。

  • シンプルにカットする。丈に合わせて、ファスナーもそこで納めます
  • ファスナーの長さを残す。ユニットをいったん外して、もとの長さを生かしたまま納めます

袖幅も一緒に見ます。丈だけを詰めると、袖先の広がりが残って野暮ったく見えることがあるので、広がりすぎないところへ、自然に調整します

どこまで詰めるかは、街着として着るのか、バイクに乗るのかで変わります。前傾した姿勢では、まっすぐ立ったときより袖が上がります。この判断は街着とライディングで変わる「理想の袖丈」に書きました。

実際にお預かりした618の袖丈詰めは、Schott 618 袖丈詰めでご覧いただけます。

袖先から詰めたショットの袖口と、切り取られた革
袖先から詰める。外れた革が、詰めた分です。

第1位|大きい、体に沿わない

いちばん多いのが、この一着です。

「大きい」という言い方をされる方は、実はそう多くありません。多いのは、「少し野暮ったく感じる」という言い方です。どこが、と言われると難しい。けれど鏡の前で、しっくりこない。

ショット、とくに613や618は、二の腕が広いのが特徴です。肩は合っているのに腕まわりだけが余って見える。野暮ったさの正体は、たいていここにあります。

先に知っておいていただきたいことが、二つあります。

ひとつ。二の腕だけを詰めることはできません。二の腕を詰めるときには、アームホールも身幅も一緒に調整することになります。腕まわりだけを細くして、他はそのまま、という直し方にはなりません。

ふたつ。ショットは、前身頃と後ろ身頃の切り替えが後ろ寄りに置かれています。そのため、調整したあとに袖ぐりへ段差が出ます。造りの上でそうなるもので、避けようがありません。

ですので、調整できる量には限界があります。どこまで詰められるかは、その一着の造りと、いまの寸法を拝見してからでないと申し上げられません。ここは要相談とさせてください。

無理に詰めれば、段差はそのぶん大きく出ます。どこで止めるのがその一着にとっていちばん良いか——それを一緒に決めるところが、この作業のほとんどです。

どこまでを自分で、どこからを工房に、という線引きはジャケットの身幅詰め、自分でやる場合とプロに出す場合の線引きにまとめました。

ひとつ、逆の場合があります。大きいのではなく、きついのであれば、詰める話ではありません。脇に革を継ぎ足して、身幅そのものを広げます。大きくする、という、繕いです。

身幅を詰めたショットの一着と、切り取られた革
身幅を詰めた一着と、外れた革。

どこから手をつけるか

五つのご相談は、性質が三つに分かれます。

  • サイズ(大きい・袖が長い)……体と一着の関係の話。着てみて決めるもの
  • 消耗(裏地・金具)……年月が出たところの話。放っておくと広がるもの
  • 見た目(エポレット)……好みの話。急がなくていいもの

いくつも重なっている一着であれば、消耗から手をつけて、サイズはその次、という順番をお勧めしています。裏地や金具に手を入れるときには、どのみち内側を開けるからです。

お手元の一着がどれに当たるかは、革ジャンの症状別診断で見立て方をご説明しています。実際の仕上がりは、ショットの施工事例でご覧いただけます。

おわりに

ショットは、直しながら着ることの似合うブランドです。頑丈に造られているぶん、手をかける相手としては骨が折れますが、そのぶん長く着るに値する一着だと考えています。

眠らせている一着がありましたら、全体と、気になる箇所の写真を数枚添えて、お気軽にご相談ください。できること、できないこと、仕上がりに残るものを、正直にお答えします。

LINEで相談する / 事例を見る

LINEで相談
上部へスクロール