革ジャンやライダースジャケットの肩に、短いベルトのようなパーツが付いていることがあります。名前を聞かれると意外と出てこない、あの部分。「エポレット」といいます。
このページでは、エポレットの意味と由来、いま果たしている役割、そして「外せるのか」という、修理の現場でよくいただくご質問について、順にご説明します。
エポレットとは──語源と意味
エポレット(epaulet / epaulette)は、ジャケットやコートの肩に取り付けられたベルト状のパーツのことです。フランス語で「肩」を意味する épaule(エポール)に由来し、日本語では「肩章(けんしょう)」と訳されます。
もともとは軍服の装飾・実用パーツとして生まれたもので、トレンチコートやミリタリージャケット、そしてライダースジャケットへと受け継がれてきました。

もともとの役割──軍装の実用から
軍服の時代、エポレットにはいくつかの実用的な役割がありました。
- 階級章や飾緒(かざりひも)を取り付ける土台にする
- 銃や鞄のストラップを肩に掛けたとき、滑り落ちないよう留める
- 手袋やベレー帽を挟んで携行する
つまり、飾りである前に「肩の上で物を留めておく」ための道具でした。現代の革ジャンではこうした実用の意味はほとんど薄れ、軍装に由来する記号として、デザインの一部になっています。
ライダースジャケットとエポレット
エポレットは、ダブルライダースによく見られるディテールです。ミリタリーウェアの意匠がバイクウェアに引き継がれ、いまではライダースの「らしさ」をつくる要素のひとつになっています。
肩の上に一本ベルトが乗るだけで、肩まわりの印象は変わります。あるとクラシックで無骨に、ないとすっきりと静かな佇まいに。エポレットの有無は、その一着の性格を決める小さな分かれ道です。
エポレットは外せる?──構造による判断
「エポレットを外して、すっきり着たい」というご相談は少なくありません。結論からいえば、外せる場合が多い。ただし、構造によって作業の中身が変わります。
- スナップやボタンで留まっているタイプ:留め具を外し、土台の始末を整える比較的シンプルな作業です。
- 肩の縫い目に縫い込まれているタイプ:肩線を一度ほどき、エポレットを抜いてから縫い直す、お仕立て直しに近い作業になります。
もうひとつ、知っておいていただきたいのは「跡」のことです。革は布と違い、一度通した針の穴が残ります。縫い込みタイプは同じ縫い目を縫い直すため跡は目立ちにくくなりますが、長く着られた革では、エポレットの下だけ日焼けを免れて色の差が現れることもあります。
どこまできれいに納められるかは、革の状態と構造を実際に拝見してからの判断になります。
おわりに──肩のディテールも、その一着の記憶
エポレットは、軍装の時代の名残をいまに伝える小さなパーツです。残して着るのも、外して整えるのも、どちらもその一着との向き合い方だと考えています。
お手元の革ジャンのエポレットについて迷われたら、写真を添えてお気軽にご相談ください。構造を確認のうえ、できること・残る跡のことまで含めてお答えします。
