裁断した三角のマチ。表の革と、裏生地と

袖丈を詰めたら脇が窮屈に|Y’2 LEATHER アームホール拡張

2026.09.22

袖丈を詰めたあとから、脇と背中が窮屈になった。腕を前に出しづらい。──そういうご相談で届いた一着でした。

詰めたのは当工房ではありません。ですから最初に見たのは、その一着が前にどう直されているかでした。

届いたときの状態

お預かりしたのは、Y’2 LEATHER のレザージャケット。ステアのGジャンタイプです。

お預かりした状態。Y'2 LEATHER のステア・Gジャンタイプ
お預かりした状態。Y’2 LEATHER のステア・Gジャンタイプ

お客様のお話では、以前に別のお店で肩から袖丈を4cm詰めていらっしゃいます。袖の長さそのものは理想どおりになった。けれども、そのあとから次のことが起きたそうです。

  • 脇まわりと背中が、かなり窮屈になった
  • 袖が、不自然に前の内側へ巻く
  • 腕を下ろしていても、肩から脇、背中に負荷がかかる
  • 腕を前に出しづらい
背面。窮屈さは脇から背中にかけて出ていました
背面。窮屈さは脇から背中にかけて出ていました

加工の前は、窮屈さはまったく無かった。ここが手がかりでした。体が変わったのではなく、一着のほうが変わっています。

肩から袖を詰めると、この症状は出やすい

肩から袖の付け根まわり。前の直しはここに入っています
肩から袖の付け根まわり。前の直しはここに入っています

袖丈を詰める道は、大きく二つあります。袖口から詰めるか、肩から(袖を一度外して)詰めるか。

肩から詰めると、袖の付け根まわりの寸法に手が入ります。この直し方のあとで、脇や背中の窮屈さを感じるというご相談は、折々にいただきます。

どちらの詰め方が正しい、という話ではありません。一着の造りとご希望によって、肩からでなければ納まらない場合もあります。ただ、そのあとに何が起きうるかは、先に申し上げておくべきことだと考えています。

どう直すと決めたか ── アームホールに、三角のマチを足す

今回は、アームホールを起点に、三角のマチを足しました。

裁断した三角のマチ。表の革と、裏生地と
裁断した三角のマチ。表の革と、裏生地と
  • 左右の身頃に、1枚ずつ
  • 左右の袖に、1枚ずつ
  • 表の革で、合わせて4枚
  • 裏生地にも同じだけ、4枚
  • 総合計8枚
アームホールを起点に、身頃と袖へ足していきます
アームホールを起点に、身頃と袖へ足していきます

表だけ足しても、裏地が突っ張ればそこで止まります。表と裏、同じ分量。革の直しで繰り返し出てくる考え方です。

裏地にも同じだけ。表だけ足しても、裏が突っ張ればそこで止まります
裏地にも同じだけ。表だけ足しても、裏が突っ張ればそこで止まります

肩の側に革を継ぎ足して広げる、という道もありません。肩線は一着の顔がもっとも出るところで、そこに手を入れると仕上がりの印象が変わってしまいます。アームホールを起点にしたのは、いちばん表情を動かさずに、必要なゆとりを作れるからです。

3cm という幅

拡張は3cmで納めました。

一度お直しを通っている品物ですから、どこまで足せるかは現物を見るまで決められません。ご相談の段階では「3cmほどが妥当と思います」とお伝えし、現物を確認したうえで、その幅で進めています。

マチを目立たせない

お客様から先にいただいたご心配が、「マチが着たときに目立たないか」でした。

工房には黒の革のストックがあります。そこから色と質感の近いものを選びました。お預かりしたあとで、使う革の現物とマチの入る位置の画像をお送りし、ご了承をいただいてから裁断しています。

この直しで変わること、変わらないこと

正直に申し上げておきたいことがあります。

これは、肩まわりに余裕を出すお直しです。着ていただいたときに、可動域が広がるというより、余裕のある着心地になる。そういう種類の変化です。感じ方には個人差があります。

そしてもうひとつ。袖が前の内側へ巻くという症状については、原因が前の直し方にあるため、「現物を見るまで判断できません」とお伝えしたうえでお預かりしています。直りますとはお約束していません。

できること、判断を保留すること。それを先に分けてお伝えしてから、進むかどうかを決めていただく。その順番を大切にしています。

仕上がり

仕上がり。脇下のマチの納まり
仕上がり。脇下のマチの納まり
全体の表情は、変えずに
全体の表情は、変えずに

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