「肩の張りが気になるので調整したい」——2026年6月、銀座のポップアップでお預かりした Lewis Leathers の一着は、そのひと言から始まりました。
袖が長い、というご相談ではありません。それでもお出しした答えは、肩口から袖丈を詰める、そして右の肩だけラインを整える、という組み合わせでした。なぜそうなったのかを記録します。
お預かりした状態

Lewis Leathers のダブルライダースです。胸にオーバルのバッジ、襟の内側に AVIAKIT のタグ。

初めてのご来店で、銀座のポップアップにお持ちくださいました(H.I.様)。
どこがどう気になったか


拝見すると、右の肩だけが浮いていました。 左は、そうなっていません。
肩が浮くというのは、肩の先で革が体から離れて、わずかに立ち上がる状態です。着ているあいだ、片側だけが落ち着かない。
袖丈は、左右それぞれ1.5cmほど長いという見立てでした。
ご相談の中身
「肩の張りが気になるので調整したい」
この一行が、今回の起点です。
どう直すと決めたか
袖丈は、袖口からではなく肩口から詰める
袖丈を詰める道は二つあります。袖口から詰めるか、肩口から詰めるか。
今回は肩口を選びました。袖先の形をそのまま残したいからです。
この一着の袖口には、ファスナーとカフスがあります。袖口から詰めれば、そこに手を入れることになる。寸法は合っても、袖先の表情は変わります。もとの状態を保つという一点で、肩口から入るほうが理にかなっていました。
詰めるのは、左右それぞれ1.5cm。
袖先から詰めるか肩口から詰めるかの一般的な判断はこちらの記事に、どこまで詰めるかの考え方はこちらの記事に書いています。
肩のラインは、右側だけ整える
左右を同じように触ることはしません。浮いていたのは右だけだからです。
左右が違うことは、めずらしくありません。Lewis Leathers には袖の付け方が左右で異なる個体があります。加えて、着る方の体そのものにも左右差があります。どちらが理由かは一着ずつ違い、個人差があります。
ですから「左右対称に直す」のではなく、浮いているほうを、浮いている分だけ動かします。
今回は右肩を、前側で3mm、後ろ側で9mm、合わせて12mm。前と後ろで量が違うのは、浮き方が均一ではないからです。
ここで、避けて通れないことが起こります。肩を動かすと、袖付けの寸法が、袖側と本体側で合わなくなる。 そのままでは縫い合わせられません。
そこで袖山を水に濡らして加工します。濡らすと革は動くようになります。その状態で形を作り、合わなくなった分を馴染ませていきます。
選ばなかった方法と、その理由
袖口から詰める。 寸法だけを見れば、これでも袖は短くなります。選ばなかったのは、袖口のファスナーとカフスに手を入れることになるからです。この一着の袖先は、そのまま残したいものでした。
両肩を触る。 左右そろえて動かせば、見た目の対称は作れます。けれど左の肩は浮いていません。合っているところを動かせば、合っていたものが合わなくなります。触らない、という判断も仕事のうちです。
仕上がりまでの見通し
いまは、まだ手を入れる前の段階です。仕上がりましたら、この記事に「仕上がり」の章を追記します。
ご相談ください
肩の片側だけが浮く。袖が少しだけ長い。そうした一着ずつの違いは、実物を拝見しないと決められません。気になるところがあれば、写真を添えてご相談ください。
