袖が太い。腕まわりがもたつく。肘のあたりだけ、ぷくりと膨らんで見える。
「袖を細くしたい」というご相談をいただきます。ですが私たちは、袖の外側と内側を分けて考えます。どちらから入るかで、できることも、お約束できることも変わるからです。
そしてこの違いは、どちらが安いかという話ではありません。寸法を指定したいのか、ラインを預けたいのか。 そこが分かれ道です。
この記事で扱うのは袖の太さです。袖の長さの話は街着とライディングで変わる理想の袖丈にあります。
袖を細くする道は、外側と内側で分かれます
同じ「袖を細くする」でも、どこから入るかで二つに分かれます。
- 内側から詰める——脇の縫い目から。膨らみに関係なく、袖全体を細くする
- 外側から断つ——袖の外側の線から。膨らんでいる箇所そのものを落とす
入り口が違えば、決め方も、仕上がりの決まり方も変わります。順に見ていきます。

内側から詰める——寸法で決めたいとき
脇の縫い目から詰めます。
ここで知っておいていただきたいのは、脇の縫い目が袖下までひと続きになっていることです。ですから身幅と袖幅はつながって動きます。「胴はそのままで、袖だけ」は構造上なかなか成立しません。逆に言えば、身幅を詰めれば二の腕まわりも一緒に細くなります。
この道の良いところは、寸法で決めやすいことです。縫い目という決まった線から詰めるので、「何センチ」の話ができます。仕上がりを数字で共有したい方には、こちらが向きます。
受け皿もあります。→ 袖幅(二の腕)詰め・身幅詰め
胴の余りも気になる方、ご自分でやるかプロに出すかで迷っている方は身幅詰めの記事へ。
※ 逆に「きつい・腕が上がらない」場合は、詰めるのではなく袖ぐりの記事をご覧ください。
外側から断つ——膨らんでいる箇所そのものを落とす
もう一つの道は、袖の外側の線から入ります。膨らんでいる箇所そのものを落とす、という考え方です。
一着、古いロンジャンをお預かりしました。70年代のものと見ています。 肘のあたりが膨らんでいて、それを外側で断ち落とし、袖の輪郭を引き直しました。
銀ペンで線を引きます。肩側から袖先側へ、膨らみの走りに沿って。落としたのは2cmほど。ここは慎重に決めます。落としすぎると、袖全体がタイトになりすぎるからです。膨らみだけを消したいのに、腕まわり全体が締まってしまっては元も子もありません。

落ちた革が、動かした量そのものです。
この一着の記録はヴィンテージのロンジャン|袖の外側を断つにまとめました。
その膨らみは、もとの型かもしれません
肘の膨らみは、革が伸びたから出るとは限りません。もとの型で、そう出来ていることのほうが多いのです。
今回のような古い一着では、それはヴィンテージ特有のディテールとも言えます。だからこれは「傷んだところを直す」仕事ではありません。もとからそう出来ている形を、いまの体に合わせて引き直す仕事です。
外側から入るときは、この見方が土台になります。消すべき膨らみなのか、その一着の顔なのか。そこを決めてから線を引きます。
袖は筒です。腕ミシンでないと取り回せません


袖は筒です。筒状のものや厚手の革は、腕ミシンでないと取り回しができません。 平らな台のミシンでは、袖が入らないのです。
外から入っても内から入っても、袖を開いて縫い直す以上、ここは変わりません。「袖を細くする」が、裾上げのようには進まない理由です。
寸法を指定したいのか、ラインを預けたいのか
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
外側から断つ場合、「何センチ詰めてください」というご要望には応えづらい、というのが正直なところです。膨らみの出方は一着ずつ違い、どこに線を引くかは現物を見て決めるからです。おまかせいただいて、自然なラインに仕上げるという考え方になります。
寸法で決めたい場合は、内側から詰める道があります。 脇の縫い目という決まった線があるので、数字の話ができます。
- 数字で決めたい・仕上がり寸法を共有したい → 内側から詰める
- 膨らみだけを消したい・全体のラインを預けたい → 外側から断つ
どちらが合うかは、その一着と、着る方のご希望で変わります。決めきれなくても構いません。この見立ては、工房でも実物を見て最終決定します。
袖のどのあたりが気になるか、写真と一緒にお送りいただければ、外と内、どちらから入るのが良さそうかをお伝えします。
山形県鶴岡市の工房で、全国からご配送でお預かりしています。
