裏地交換のご相談は、たいてい「破れた」「擦れた」から始まります。この一着は、どこも破れていません。
替える理由は、かさばることでした。
ルイスレザーのダブルライダース。本体には赤いキルティングが入っています。体型が変わり、この厚みがそのまま窮屈さになった——だから革には手を入れず、裏地だけを薄いものに替えて、内側にゆとりを作ります。
同じルイスレザーの裏地交換でも、ブラックニットナイロンからキュプラへ替えた一着は「袖通しの悪さ」が理由でした。あちらは滑り、こちらは厚み。同じ作業でも、見るところが変わります。
お預かりした状態
Lewis Leathers のダブルライダース。内タグは AVIAKIT、MADE IN ENGLAND、サイズは 42 です。
表革に、直さなければならないところはありません。ファスナーも動きます。裏を返すと、本体は赤いキルティング、袖裏は茶のサテン。ルイスレザーらしい配色が、そのまま残っています。
裏地としても、まだ破れていません。この一着は、傷んでいないものを替えます。

かさばる、ということ

キルティングは、生地を二枚合わせて中に綿を入れ、細かく縫って押さえたものです。暖かく、丈夫です。そのぶん、厚い。

体型が変わったとき、革はそのままでも、内側の厚みぶんだけ着心地は変わります。肩や胸まわりに、以前はなかった窮屈さが出る。革を大きくする方法もありますが、この一着では革に手を入れません。内側の厚みを落とすだけで、ゆとりは作れます。
ご相談のとき、いちばん最初にうかがったご要望が「かさばらない仕上がり」でした。
ご相談の中身
これからまだまだ着用していきたい
裏地を薄くしたいというご相談と、この一言が同時にありました。仕上がりの基準は、この二つで決まっています。軽く、そして次の何年かに耐えること。
どう直すと決めたか
本体は、同じ赤のキュプラへ
新しい裏地はキュプラ、色は赤。いま入っている赤いキルティングと、同じ色を選びました。
見た目は変えません。変えるのは厚みだけです。キュプラは滑りがよく、袖通りが軽くなります。裏地の素材ごとの違いは裏地の記事にまとめてあります。

裏地の交換は、革の内側にアクセスできる分量だけ、裏地を解くところから始まります。元の裏地を型として写し、新しい生地を裁つ。だから、いま入っている裏地の形がそのまま次の形になります。
袖は、黒のキュプラへ
袖裏だけは、色を変えます。黒のキュプラです。
本体が赤なので、袖には濃い色のほうが合います——そうご案内し、黒をお選びいただきました。もとの茶のサテンから、黒へ。本体と袖で色を分けるという選び方です。
内ポケットのない一着
この個体には、内ポケットがありません。ポケット裏の作業は発生しませんでした。
裏地交換では、内ポケットの数と位置が作業の中身を決めます。何がないかを最初に確かめるのは、そのためです。
選ばなかった方法と、その理由
ご相談の途中で、チェック柄(ハリスツイード)の裏地も候補に挙がりました。裏地を替えるとき、いちばん表情が変わる選択肢です。
選びませんでした。理由は一つで、厚手だからです。ハリスツイードは温かく、風合いがあります。ただ、この一着で解きたかったのは厚みでした。ツイードを入れれば、着用感はいまと変わらない——それでは替える意味がなくなります。
同じ素材が正解になる一着もあります。ハリスツイードを選んだレザーハーフコートは、温かみを足すことが目的でした。素材に良し悪しはなく、その一着で何を解きたいかだけがあります。
仕上がりまでの見通し
完成の予定は2026年11月です。仕上がりましたら、この記事に「仕上がり」の章を追記します。
裏地を替えるだけの一着に見えて、決めたことは三つありました。色を残すこと。厚みを落とすこと。袖だけ色を分けること。どれも、革には触れずに済むことです。
ご相談ください
内側がかさばる、着ていて窮屈になった——そうした一着をお持ちの方は、写真を添えてご相談ください。革を直すのか、裏地で納まるのか。見立てからご提案します。
ご自分の一着がどの症状にあたるか分からないときは、革ジャンのサイズが合わない|症状別に見る直せる範囲もどうぞ。
