袖を通そうとしたら、白いカビが浮いていた。そのとき最初にしてほしくないことが、一つだけあります。濡れた布で、こすることです。カビは、こするほど革の奥へ入り込みます。
このページでは、自宅で落とせるカビの手順と、手を止めてご相談いただきたいカビの見分け方を、修理台の視点からご説明します。
なぜ革ジャンにカビが生えるのか
カビは「湿度・温度・栄養」の3つが揃うと繁殖します。革は湿気を吸いやすく、表面の油分や皮脂汚れがカビの栄養になるため、風通しの悪いクローゼットは、革ジャンにとってカビの好条件が揃った場所です。
着ないまま長くしまい込んだ一着ほどカビが出やすいのは、このためです。カビ自体は革の寿命ではありませんが、放置すると革の劣化を早めます。革の劣化全般については革ジャン・レザーの劣化は直せる?症状別の見極めと再生の考え方で解説しています。
そのカビは落とせるか──まず、見分けから
カビ取りの成否は、こすり始める前に半分決まっています。まず、状態を見分けてください。
白く、粉をふいたように浮いている
革の表面にとどまっているカビです。この状態なら、後述の手順で落とせる見込みが高いといえます。見つけたのが早いほど、跡は残りにくくなります。
色が残っている。シミのように見える
青や黒を帯びた点、輪郭のあるシミになっているカビは、革の内部まで入り込んでいるサインです。この状態を布でこすっても、カビは取れずに範囲だけが広がります。ここで手を止めて、そのままの状態でご相談ください。無理にこすると革を傷め、かえって手当ての選択肢を狭めてしまいます。
裏地やポケットの中に出ている
カビは革の表側だけでなく、湿気のこもりやすい裏地側にもよく出ます。布地に根を張ったカビは洗って落とすことが難しいのですが、裏地には「交換して新しくする」という選択肢があります。革が無事なら、一着はまだ十分に続けられます。
スエード・ヌバックなどの起毛革
表面を起毛させた革は、布で拭くこと自体が風合いを変えてしまうことがあります。自宅でのケアは、乾いたブラシで表面のカビを払うところまでにとどめて、それ以上は状態を見せていただくのが安全です。
カビ取りを始める前の準備
作業の前に、以下を用意してください。
- 使い捨ての布(ウエス)またはタオル
- 除菌用アルコール(エタノール)または重曹
- 革専用のオイルやクリーム
- マスクと手袋(カビの胞子を吸い込まないために)
なお、革の種類によってはアルコールで色落ちや変質が起きる場合があります。必ず袖の内側などの目立たない部分でテストしてから、全体に使ってください。
自宅でできるカビ取り・4つの手順
カビの胞子を部屋に散らさないよう、作業は屋外やベランダで行うのが基本です。
1. カビを払い落とす
乾いた布で、表面のカビを優しく拭き取ります。強くこするとカビが革の奥へ入り込んでしまうため、押し付けないように。使った布は、そのまま処分してください。
2. アルコールまたは重曹水で除菌する
水で薄めたアルコール、または重曹水(水100mlに重曹小さじ1)を布に含ませ、カビのあった場所を叩くように拭き取ります。ここでも、こすらないことが肝心です。
3. 風通しの良い場所で陰干しする
水分が残っていると、再びカビの原因になります。直射日光を避け、風通しの良い場所で2〜3日かけてじっくり乾かしてください。
4. オイルで油分を補う
除菌と乾燥を終えた革は、油分が抜けた状態です。専用のオイルやクリームを塗り込み、柔軟性を取り戻させます。
やってはいけないこと
修理台に届く一着には、カビそのもののよりも「カビ取りの跡」が課題になっているものがあります。次の4つは避けてください。
- 水拭きだけで済ませる──カビは落ちず、革に湿気を足すだけになります。除菌と乾燥まで通してください
- 強くこする──カビが革の奥へ入り、シミに変わります
- ドライヤーや直射日光で急いで乾かす──革が硬くなり、風合いが戻らなくなります
- 塩素系漂白剤や家庭用のカビ取り剤を使う──布や浴室のためのもので、革に使うと変色し、元に戻せません
再発を防ぐ保管のコツ
カビは、環境が変わらなければ繰り返します。ポイントは3つです。
- ビニールカバーを使わない──湿気がこもる原因になります。通気性の良い不織布カバーへ
- クローゼットの換気と除湿──定期的に扉を開けて空気を入れ替え、除湿剤を置く
- 時々、着る──外に出して風に当て、着て動かすことで湿気が飛び、カビの定着を防げます
シーズンオフのしまい方は革ジャンの保管方法|型崩れ・カビを防ぐしまい方と日常ケアで、濡れた後の正しい乾かし方は革ジャンは雨に濡れても大丈夫?で詳しく解説しています。
落ちないカビ、カビの跡が残った革はご相談ください
カビの跡がシミになった、カビ取りの後に風合いが乱れた、革が硬くなってしまった──そうした状態の手当ては、一着ずつ革の状態を見て判断します。裏地のカビなら、裏地ごと新しく交換する方法もあります。
ご相談の際は、写真を3枚いただけると、状態の見当がつけやすくなります。
- 一着の全体がわかる写真
- カビ(または跡)の部分に寄った写真
- 裏地・内側の写真
「もうダメかもしれない」と諦める前に、そのままの状態でお見せください。LINEでお気軽にご相談いただけます。
