「革ジャン」と「ライダース」。ふだん何気なく使い分けているようで、いざ違いを聞かれると答えに迷う言葉です。
このページでは、ライダースジャケットという言葉の意味と由来、革ジャンとの関係、そしてシングルとダブルという二つの型の違いを、順にご説明します。

ライダースジャケットとは──バイクのための一着
ライダースジャケットは、もともとバイクに乗るためにつくられた革のジャケットです。走行中の風や、万一の転倒から体を守るために、丈夫な革が選ばれました。
その目的は、形にもよく表れています。走行姿勢で裾がもたつかないよう丈は短めに、風をはらまないよう体に沿う細身のつくりに、前傾しても背中が出ないよう後ろ身頃はやや長めに。ライダースの「らしさ」と呼ばれる要素の多くは、飾りではなく、バイクの上での必要から生まれたものです。
ちなみに「ライダース(ジャケット)」は日本での呼び名で、英語圏では biker jacket や motorcycle jacket と呼ばれることが多い言葉です。
革ジャンとライダースの違い
結論からいえば、革ジャンは革のジャケット全般の呼び名、ライダースはそのなかの一つの系統です。
革ジャンという言葉には、ライダースのほかにも、飛行士のために生まれたフライトジャケット、スポーツウェア由来の丸襟のジャケット、テーラード型の革ジャケットなど、さまざまな型が含まれます。つまり、ライダースはすべて革ジャンですが、革ジャンのすべてがライダースではない──そういう関係です。
見分けの手がかりになるのは、前述の「バイクの上での必要」の名残です。短めの丈、体に沿うシルエット、風の入りにくい前合わせ。こうした特徴がそろっていれば、その一着はライダースの系譜にあると考えてよいでしょう。
シングルライダースとは
シングルライダースは、前合わせが体の中心でまっすぐ留まる型です。襟は、立ち襟(スタンドカラー)か、襟のないノーカラーが中心。ファスナーが表に出ないよう比翼仕立てになっているものもあります。
装飾が少なく、佇まいは静か。ジャケットに近い感覚で羽織れるため、ふだんの装いに合わせやすい型です。中に着るものの厚みに合わせて表情が変わる、素直なつくりともいえます。
ダブルライダースとは
ダブルライダースは、前身頃を斜めに大きく重ねて留める型です。打ち合わせが深く重なることで走行中の風の侵入を防ぐ──これも元はバイクの上での工夫でした。
大きく開いたラペル(下襟)、斜めに走るフロントファスナー、ウエストのベルト。そして肩の上にはエポレットが付くことも多く、装飾的で無骨な印象をつくります。シングルが「静」なら、ダブルは「動」。同じライダースでも、性格ははっきり分かれます。
細部にも、名前と理由がある
ライダースのディテールには、それぞれ由来と役割があります。
- エポレット:肩のベルト状のパーツ。軍装に由来します。→ エポレットとは
- アクションプリーツ:背中の縦の折り込み。腕を前に出す動きに合わせて開閉し、可動域を生みます。→ アクションプリーツとは
- Dポケット:ダブルの胸元に付く、D字型のフラップポケット。地図などを入れたといわれる名残です。
名前がわかると、その一着がどんな必要から生まれた形なのかが見えてきます。
修理台から見たライダース──体に沿う服だからこその悩み
ライダースは、体に沿うことを前提につくられた服です。だからこそ、体の変化や着方の変化に敏感で、「前が閉まらなくなった」「肩まわりが張る」「もう少しゆとりがほしい」というご相談を多くお預かりします。
細身の設計は欠点ではなく、この服の成り立ちそのものです。そのうえで、いまの体に合わなくなった一着は、革を継ぎ足すお仕立て直しで、もう一度纏える形へ整えることができます。
おわりに──呼び名の先にある、一着との付き合い
ライダースジャケットとは何か。それは、バイクの上での必要が形になり、時を経て日常の装いへ受け継がれてきた革ジャンの一系統です。
お手元の一着がシングルでもダブルでも、サイズや傷みのことで迷われたら、写真を添えてお気軽にご相談ください。構造を確認のうえ、できることをお答えします。
