「ライダースジャケットの身幅だけを細くしたい」「袖だけスッキリさせたい」といったご要望は、お客様からよくいただく内容のひとつです。特に、BUCOやSchott、Lewis Leathersなどのライダースジャケットは体にフィットさせて着たいという方が多く、細かなサイズ感の調整をご希望されるケースが増えています。
ですが、実際には「身幅だけ」「袖幅だけ」を詰めることには注意点もあります。理由は、ライダースジャケットの構造にあります。身頃と袖はアームホール(袖ぐり)でつながっており、全体のバランスが密接に関係しているからです。
そして何より、「パターン上、無理が出るのがお直し」です。一見すると単純な寸法調整に見えても、元の設計とのバランスを崩さないよう慎重に進める必要があります。
この記事では、それぞれのケースでどのような変化が起こるのか、具体例を交えながら解説いたします。
身幅のみを詰めた場合のシルエットの変化
身幅を詰めることで、ジャケットの胴回りが引き締まり、見た目にもスッキリとした印象になります。特に、ウエスト位置がくびれて見えるようになり、スタイルアップを感じやすい加工です。
しかし、身幅だけを詰めた場合、アームホールのサイズは元のままになります。そのため、袖の付け根部分に余りが生じたり、肩から腕にかけての流れがやや不自然に見えることがあります。たとえば「ウエストはぴったりになったけど、脇まわりがゆるく見える」といった仕上がりになることもあります。
このような場合は、袖幅やアームホールとの兼ね合いを見ながら微調整を行うことで、自然なラインを出すことができます。

袖幅のみを詰めた場合のシルエットの変化
反対に「腕だけが太くて気になる」「二の腕のだぶつきが気になる」といった理由で、袖幅だけを詰めたいという方もいらっしゃいます。特にインナーが薄着になる春先や秋口には、袖まわりの余裕が気になる季節でもあります。
袖幅を詰めることで、腕まわりがスッキリ見え、細身のパンツやブーツと合わせたときのバランスも良くなります。ただし、アームホールが大きいままだと、袖だけが細くなってしまい、つけ根との段差が目立ってしまうことがあります。
このようなときは、アームホールの補正や身幅調整も含めてトータルで検討することで、より自然で快適な仕上がりになります。
身幅と袖幅を同時に詰めた場合のメリット
理想的なシルエットに近づけるには、身幅と袖幅の両方を調整するのが最も自然でおすすめです。
たとえば、全体をワンサイズ下げたような感覚でスッキリと見せたい場合、身幅・袖幅・アームホールをバランス良く整えることで、着心地と見た目を両立することができます。特に上質なライダースジャケットは、長く着る前提で作られているため、今の体型に合わせた微調整が大切です。
もともとの設計図(パターン)を崩さず、どれだけ自然に整えられるか。職人として、そこに最も気を配りながら作業を行っています。
当店では、ミリ単位の補正は行っておりませんが、自然な仕上がりを重視したサイズ調整をご提案しています。サイズ感にお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ:見た目の変化と着心地、どちらも大切に
サイズ調整の目的はさまざまですが、仕上がりをイメージする際には「見た目」と「着心地」両方のバランスが大切です。
特にライダースジャケットのように、構造が複雑で生地も厚手のものは、一箇所を詰めることで他の箇所に影響が出ることがあります。これは、元のパターンに無理をかける形になるためで、職人の経験と判断が問われる作業でもあります。
だからこそ、私たちは一着一着の状態を丁寧に確認しながら、お客様のご希望に合わせた提案を心がけています。
「なんとなく着づらい」「もう少しスッキリさせたい」——そんな気持ちを感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの一着に、より心地よいフィットをお届けします。