
レザージャケットのリサイズで「袖幅だけ」「身幅だけ」が難しい理由
〜構造と素材特性から考える、バランス重視の調整〜
はじめに|よくあるご相談「袖だけ」「身幅だけ」詰めたい
レザージャケットのリサイズをご検討中のお客様から、よくいただくご相談のひとつが
「袖幅だけ細くしてもらえますか?」
「身幅だけスッキリさせたいのですが……」
といった、“一部だけ”のサイズ調整のご要望です。
見た目の印象から「この部分だけ直せば良さそう」と感じられるのは自然なことです。
ですが、レザージャケットの場合、袖幅と身幅は基本的にセットで調整する必要があるというのが、私たちの実務上の考え方です。
その理由は、構造上の制約と、レザー素材の特徴にあります。
構造の基本|袖と身頃は別パーツ、でも“アームホール”でつながる
まず押さえておきたいのが、ジャケットの構造についてです。
レザージャケットに限らず、ほとんどのジャケットは「袖」と「身頃」が別パーツで構成されています。
これらはアームホール(袖ぐり)部分で縫い合わされて接続されており、この接合部分の形状やサイズが、リサイズの可否を大きく左右します。
▶ アームホールには“径”がある
接続部分であるアームホールには、それぞれに袖側のカーブ(袖山)と身頃側のカーブがあり、縫い合わせるにはこの「径(長さ・曲線の形状)」が正確に合っている必要があります。
特に、袖側の径は、身頃側よりやや大きく設計されていることが多く、この“ゆとり”によって袖付け部分に立体感が生まれ、腕の可動域や自然なシルエットが保たれるようになっています。
ですが、このバランスが崩れると――
- 袖が吊れる
- ねじれる
- アームホール周辺にシワが寄る
- 腕が動かしづらくなる
など、機能性にも見た目にも悪影響が出る可能性があるのです。
型紙上の特徴|袖山の湾曲が大きく、可動域に影響する
レザージャケットの袖は、型紙上で袖山(そでやま)のカーブが大きく取られていることが多いのも特徴です。
これは、ジャケットを着用した際に腕を自然に下ろした状態で最も美しく見えるように設計されたものです。
その一方で、腕を上げる動作がしづらくなるというデメリットもあります。
つまり、もともと動きに制限のある構造であるにもかかわらず、袖や身幅を“片方だけ”詰めてしまうと、
アームホールのバランスが崩れてさらに動きづらくなってしまうということです。
素材の特性|革はクセが残りやすく、修正が難しい
レザー素材そのものにも、リサイズの難しさがあります。
- 革は厚みとコシがあり、伸びにくい素材
→ わずかな誤差が着心地に直結します - 一度縫製された部分には“クセ”が残りやすい
→ ステッチ跡や折りぐせが消えにくく、再縫製で仕上がりに差が出ることがあります
そのため、無理に部分だけを詰めようとすると、
- シルエットの崩れ
- 可動域の制限
- 表面の歪みや縫い跡の目立ち
といった実用的な支障が出てしまう可能性があります。
実際の事例|袖と身幅をセットで詰めたケース
以下は、当店で実際にご依頼いただいたレザージャケットのリサイズ事例です。
- ご相談内容:全体的にルーズな印象をスッキリさせたい
- 作業前の状態:袖幅・身幅ともに広く、特に二の腕周りが太く見える
- 作業内容:袖幅と身幅をバランスよく詰め、アームホールの径を調整
- 仕上がり:シルエットが自然に引き締まり、着心地も快適に
▶ Before

▶ After



このように、構造を正しく踏まえたリサイズを行うことで、見た目も着心地も損なわない調整が可能になります。
まとめ|リサイズは「全体の構造」と「素材のクセ」を考えて判断
レザージャケットは構造上、袖と身頃がアームホールで正確に接続される設計になっており、
片方だけを詰めてしまうと、その接合部にズレや歪みが生じてしまいます。
また、レザーは**動きに制限がある構造(袖山のカーブ)**であるうえ、クセが残りやすい素材であるため、リサイズには繊細な判断が求められます。
結果として、袖幅・身幅は必ずセットで検討することが基本となるのです。
「このサイズ感、直せる?」と思ったら
kawaremakeでは、お客様の体型や着用シーンに合わせて、パーツ単位ではなく“構造全体”を見据えたリサイズのご提案を行っています。
「この部分だけ詰めたい」と思ったときこそ、ぜひ一度全体バランスからの見直しをご検討ください。
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