ご相談の背景
今回お預かりしたのは、レザージャケットの肩まわり――特に「アームホール(肩の付け根部分)」が大きく裂けてしまったというご相談です。

アームホール周辺は、腕の上げ下げや荷物を持つといった日常動作で負荷がかかりやすい部分。革は丈夫な素材ではありますが、動きの繰り返しによる摩耗や、体型に対して少し合っていないサイズ感などが重なると、思わぬ破れにつながることがあります。
「いつの間にか裂けていた」「気づいたときには裏地が見えていた」
そんなケースも少なくありません。
ですが、こうしたトラブルも、素材や構造に配慮した修復を行うことで、着心地や印象を損なわず、無理なく長く着られる状態に整えることが可能です。
ダメージの状態
破れは、ジャケットの左肩アームホールの縫い目に沿って発生し、革が裂けて裏地が見えてしまうほどでした。糸がほつれたというよりも、革自体が引っ張られて破れた状態で、かなりのテンションが一点に集中していたことがうかがえます。
サイズがタイトめで肩に力が入りやすい着方や、重い荷物を片側で持つ習慣などが、破れの一因と考えられます。
修理内容と工夫点
今回の修理では、破れた部分を単純に縫い直すのではなく、強度と動きやすさを両立させる方法で対応しました。
まず、破れた箇所の裏側には「当て革(あてがわ)」を挿入し、内側から革の裂けを支える構造に変更。これにより、表面の革だけに負担がかかるのを防ぎ、全体で力を受け止められるようにしています。
さらに、破れの程度や箇所によっては当て革だけでは不十分な場合もあるため、今回はアームホールの下に「三角マチ(ガゼット)」を追加して、縫製による補強も併用しました。

修理のポイントは以下のとおりです:
- 内側から当て革を挿入し、革の裂けを補強
- 動きやすさと強度を両立するため、アームホール下に三角マチ(ガゼット)を追加
- 色味と質感が近い革を選定し、全体の雰囲気を損なわないよう調整
- 必要に応じて二重縫製を施し、今後の裂け予防も考慮



完成後の印象
補修後は、補強パーツがしっかりと馴染み、日常の動作にも十分に耐えられる状態に回復しました。使用した革は元の素材にできるだけ近いものを選びましたが、補強したラインや縫製の跡は、近くで見るとわずかに残ります。
とはいえ、修理痕が目立ちすぎるような仕上がりではなく、全体の雰囲気としては自然にまとまっており、「きちんと手を入れたこと」が感じられる、実用的かつ丁寧な補修になったと思います。
また、補強によって構造的にも耐久性が増しているため、今後も安心してご着用いただける仕上がりとなりました。
破れを防ぐために|お手入れとサイズ感の見直し
こうした肩まわりの破れを予防するためには、以下のポイントを意識していただくのがおすすめです。
✔ サイズ感を見直す
特に肩や胸まわりがきつい場合、縫い目や革にテンションが集中しやすくなります。着心地がタイトに感じるようであれば、リサイズのご相談も視野に入れてみてください。
✔ 革の保湿ケアを怠らない
乾燥して硬化した革は裂けやすくなります。定期的にレザークリームやオイルで保湿し、柔らかさとしなやかさを保つことが大切です。
✔ 着用習慣に気をつける
片側だけ重いバッグを持つ、腕を大きく後ろに引く動作なども、アームホールに思わぬ負担をかけてしまいます。日々のちょっとした意識で、革のダメージは大きく軽減できます。
まずはお気軽にご相談ください
レザージャケットの破れは「もう着られないかも」と諦めてしまいがちですが、実際には補修可能なケースがほとんどです。特に早めのご相談であれば、より目立たない形で、自然な修復がしやすくなります。
kawaremakeでは、素材や構造の特性を見極めながら、お客様の体型や着用スタイルに寄り添った修理提案を行っています。
大切な一着をまた気持ちよく着られるよう、ぜひお気軽にご相談ください。