はじめに
レザージャケットの身幅詰めは、体型や着方の好みに合わせてシルエットを整える人気の高い加工です。単に「細くする」だけではなく、インナーとの相性や素材の硬さ、ポケット位置、袖の太さなど、ジャケット全体のバランスを見ながら調整します。本ページでは、身幅詰めの考え方から注意点、ご相談方法までをまとめました。
身幅詰めとは?どこを調整するのか
レザージャケットの身幅は、主に 前見頃(Front panel|フロントパネル)、後ろ見頃(Back panel|バックパネル)、脇のパーツである 細腹(Side panel|サイドパネル) の3ブロック、もしくは前見頃+後ろ見頃の2ブロックで構成されています。調整は脇下の中心近くにある各パーツの繋ぎ目(シーム)で行うのが基本です。
- 脇下中心での調整が最も仕上がりが安定しやすい一方、実物はパーツの繋ぎ目が中心から前後にずれていることがあります。ジャケットの設計を確認し、最適な取り位置を見極めます。
- 繋ぎ目の位置が大きく前後している場合は、新たに切り込み(スリット)を設けることで整合を取ります。この場合、脇下から裾方向へまっすぐ切り込みを入れ、前見頃または細腹のどちらかを脇下中心の基準とします。
- 脇から離れた位置だけで詰めると、**アームホール(Armhole|アームホール)**に段差が生じ、袖が見頃に正しく付かないリスクが高まります。必要に応じて切り込み+再配分で対応します。

身幅詰めが他の部分に与える影響
二の腕まわりの変化
身幅とアームホールは連動しているため、身幅を詰めると二の腕まわりも自然に細くなります。さらに袖口へ向けてシャープにしたい場合は、**袖のテーパリング(Sleeve taper|スリーブテーパー)**を同時に行うことで、全体のラインがより整います。
希望のシルエットに合わせた調整
バスト〜ウエスト〜裾、二の腕〜肘〜袖口まで、気になる箇所を起点に設計可能です。たとえば、
- ウエストをやや絞ってXライン寄りに
- 裾の広がりを抑え、直線的なIラインへ
- 袖口の広さを微調整して手元のもたつきを軽減
ジャケットの種類別の配慮
- テーラードジャケット(Tailored jacket|テーラード):構造が複雑で、切り替え線にポケットが干渉することが多いです。ポケットユニットを一度外し、身幅を調整後にサイドポケットをはめ込み直すことで、ポケットサイズを保ちながら整えます。
- ライダースジャケット(Riders jacket|ライダース):たとえば Lewis Leathers(ルイスレザーズ) や ADDICT CLOTHES(アディクトクローズ) のように裾に切り替え+脇ベルトがあるタイプは、ベルト余りを出さないため後ろ側で裾回りを詰めることがあります。両脇に新たな切り込みを作らず、違和感なく仕上げるための手順です。

重要な注意点(仕上がりと着心地を両立するために)
1. 普段着のインナー厚を前提に設計
冬場に厚手のセーターやニットを着る場合は、あえてゆとり量(Ease|イーズ)を残す設計が現実的です。とくにハリのある 牛革(Cowhide|カウハイド) や硬めの 馬革(Horsehide|ホースハイド) は、素材自体の反発で着心地の余裕が変わります。採寸は実際に着るインナーを想定して行うのが安心です。
2. 革と裏地のバランス
袖通りの違和感は、表革と裏地の寸法差が原因のことがあります。裏地が余ってたるむと引っかかりやすく、着心地を損ねます。状況により、裏地のみを調整することで快適さが大きく改善します。
3. ポケット近接部の制約
「ポケット位置まで細くしたい」というご要望には、以下の理由で1〜2cmの離隔が必要です。
- 縫い代(Seam allowance|シームアロワンス)の確保:縫い目の強度維持に必須。
- 革の厚みに応じた縫製品質:余裕がないと針通りが不安定になり、縫い目が乱れます。
- 構造的安定性:ポケットぎりぎりまで詰めると形崩れや局所的な負荷増大に直結。
さらに、ポケット周りを無理に細くすると、
- デザインバランスが崩れやすい(ポケットが小さく見える)
- 使い勝手が低下(手が入れにくい、収納力低下)
- ファスナー(Zipper|ジッパー)一体型や袋布一体構造は加工不可の場合あり
※ 実際の可否は現物確認が前提です。耐久性や全体バランスを損なう加工はお受けできません。
4. ムートン(Shearling|シアリング)素材の特性
ムートンは毛の面と革の面が一体で高い保温性があります。毛足の長さ次第でフィット感が大きく変わり、サンプルより毛足が長いと同じ寸法でも窮屈に感じます。採寸・設計時は毛足を考慮し、やや余裕を持つ設計を推奨します。

作業の流れ(身幅詰めの基本プロセス)
- ヒアリング:着用シーン、インナー想定、気になる箇所を確認。
- 採寸・現物チェック:パターン構成、ポケット干渉、革・裏地の状態を確認。
- 設計:詰め量の配分(前・後・細腹、裾回り、袖連動の要否)を決定。
- 本縫い・仕上げ:縫製後、ステッチ調整と最終仕上げを行います。


作業後の状態(フィット感・見え方)
- 不要なたるみが減り、身体に沿った自然なシルエットに。
- 袖のラインも連動して整うため、横姿・後ろ姿の印象が向上。
- ベルト・ジッパー・ポケットなどの意匠性を損ねない範囲での調整を重視します。
料金・納期の目安
- お見積もり・ご相談:無料
- 納期:デザインや状態により変動します(繁忙期は変わる場合があります)。
- ムートン素材は一般的な革より加工難度が高く、特殊ミシンを使用する場合があるため、通常料金に +3,240〜5,400円 程度加算となることがあります。
※ 正式な金額は現物確認後にご案内します。
よくあるご相談例(注意点と合わせて)
- 「脇だけ強く詰めたい」 → アームホール段差のリスク。袖付けへの影響を見て配分設計をご提案します。
- 「ポケットぎりぎりまで細く」 → 強度・耐久・見え方の観点から離隔が必要。現物構造により可否判断。
- 「冬の厚手ニット前提」 → ゆとり量を確保。春秋の薄手インナー時にもだぶつかない範囲で設計。
- 「裾ベルトを活かしたい」 → 後ろ側での裾回り調整など、意匠を残す方法を優先。
ご相談・お見積もりについて
最適な仕上がりのため、**写真(着用/平置き)**をお送りください。詰めたい箇所・気になる点が分かる角度があると判断がスムーズです。LINEまたはお問い合わせフォームからご連絡いただければ、職人が直接内容を拝見し、作業可否や概算をご案内します。返信は順次となり、お時間をいただく場合があります。
- ご相談・お見積もりは無料です。
- 作業に関する技術的なご質問にもお答えします。
まとめ
身幅や袖の調整は、着心地と見え方の両立が大切です。インナー・素材特性・デザイン意匠を踏まえた細やかな設計で、ストレスの少ない着心地へ。大切なレザージャケットを長く気持ちよく着られるよう、私たちが丁寧にお手伝いします。まずはお気軽にご相談ください。