ご相談の背景
レザージャケットは長年着ることで、革が体になじみ、味わいが増していく楽しみがあります。その一方で、内側の裏地はどうしても摩耗や破れが避けられず、「表はまだ使えるのに、裏地だけボロボロ…」というご相談を多くいただきます。
今回は、そんなケースのひとつ。裏地が擦り切れてしまったヴィンテージのフライトジャケットの修理についてご紹介します。
ヴィンテージのG-1フライトジャケット|裏地の首元と裾にダメージ


ご相談いただいたのは、ヴィンテージのG-1(ジー・ワン)フライトジャケット。アメリカ海軍で採用されてきた定番モデルで、襟のムートン(羊毛)やリブ付きの袖・裾が特徴的です。
このジャケットも長年大切に着られてきたことで、首元と左右の裾の裏地に擦り切れや破れが発生していました。とくに襟周りは肌や手が直接触れることが多く、摩耗しやすい箇所です。
G-1ジャケットは、中綿や保温材の入っていない一枚仕立ての裏地構造。そのぶん生地が傷むと着心地に直接影響するため、早めのメンテナンスが推奨されます。
ちなみに、同じく人気のあるA-2(エーツー)フライトジャケットも、構造は似ており、裏地トラブルのご相談が多いモデルです。G-1が海軍仕様、A-2が陸軍仕様と用途は異なりますが、どちらも裏地の劣化は共通する悩みのひとつといえます。
修理内容と理由:本体から型紙を作成して裏地を新調
元の裏地が型紙として使えない場合
通常、裏地の交換では「元の裏地を外して型紙を作る」方法が基本です。ただし今回のように、生地が破れたりほつれていたりして、原型をとどめていない場合は、この方法が使えません。
そのため今回は、ジャケット本体の構造をもとに新しく型紙を作成。この作業を丁寧に行うことで、表革とのサイズ差をなくし、着たときの突っ張りやモタつきが起きないよう仕上げます。
新しい裏地の選定と縫製
裏地には、耐久性と滑りの良さを兼ね備えた生地を選び、G-1のヴィンテージ感を損なわない色味と風合いで仕立て直しました。表側のレザーが持つ雰囲気を大切に、違和感のないよう心がけています。
完成後の状態:清潔感と快適性がよみがえる


擦り切れや破れがなくなったことで、着脱時のひっかかりが解消され、袖通しもスムーズに。裏地が変わるだけで、見えない部分から全体の印象が引き締まるのが実感できます。
革の経年変化はそのままに、内側だけが新しくなったこのバランス感は、レザージャケットを長く着たい方にとって理想的な仕上がりです。
ブランドタグの移設とネックループの扱いについて
ブランドタグは可能な限り移設
元の裏地についていたブランドタグは、新しい裏地へ丁寧に縫い直しいたしました。長年連れ添った証でもあるこのタグは、多くの方にとって思い入れのあるパーツです。できるだけ元の位置や雰囲気を再現するよう心がけています。
ネックループ(吊り下げ用の革パーツ)は再現できない場合あり
G-1によく見られる首元の**ネックループ(吊り下げ用の小さな革パーツ)**については、革の状態によっては同じものを再生するのが難しい場合があります。その際は、代替素材での製作や、省略のご提案をさせていただくこともあります。
お手入れアドバイスと裏地長持ちのコツ
裏地の寿命を少しでも延ばすために、以下のような日常ケアがおすすめです。
- 着用後は陰干しして湿気を飛ばす
- クローゼットは風通しの良い場所を選ぶ
- 裏地に負担の少ないインナーを選ぶ(滑りの良い素材)
裏地は見えない部分だからこそ、劣化に気づきにくいもの。定期的に内側の状態もチェックする習慣を持つことが、長く快適に着る秘訣です。
まずはご相談ください
「裏地が破れてしまったけれど、革はまだ着られる」
そんな状態でお困りの方、決して少なくありません。
ヴィンテージのG-1やA-2など、ミリタリー系レザージャケットの裏地交換も、状態に応じて丁寧に対応しております。
「これは直せるかな?」「まだ着られるかな?」
そう思ったら、ぜひ一度ご相談ください。一着ごとの状態に合わせて、最適な修理方法をご提案させていただきます。